「新幹線延期=不動産は弱い」は早計。むしろ“勝ち筋”がクリアになった話

北海道新幹線の札幌延伸について、2030年度末の開業は「極めて困難」とされ、現在は新たな開業時期が未定となっています。さらに国交省関連資料では、現時点の見通しとして、完成・開業は概ね2038年度末頃とする整理も示されています。加えて、工程に大きな影響を与える追加リスクが発生した場合、さらに数年単位で遅れる可能性もあるとされています。 

このニュースだけを見ると、北海道の不動産にとってネガティブに見えるかもしれません。

しかし、投資の視点で見ると、必ずしもそうではありません。
むしろ今回の延期によって、**「どこに張るべきか」「どのタイプの物件が強いのか」**が、以前よりもはっきりしてきたと考えられます。


1. 延期の本質は「需要が消える」ではなく「供給が増えにくい」

北海道新幹線の遅れの背景には、トンネル比率の高さ、想定外の地質、巨大岩塊、工事の難航、建設業界の人手不足や労働時間規制など、複数の構造的な要因があります。鉄道・運輸機構も、想定を上回る地質不良、巨大岩塊の出現、建設業の時間外労働規制などを背景に、2030年度末の完成・開業は極めて困難と報告しています。 

つまり、今回の延期は単なるスケジュール変更ではありません。
北海道の大型インフラや大型開発が、計画通りに進みにくい環境にあることを示しています。

これは不動産投資において重要です。

なぜなら、インフラ整備が遅れるということは、同時に周辺の新築開発、駅前再開発、大型商業開発、宿泊施設開発なども、簡単には増えにくいということだからです。

供給が読みづらい局面では、すでに存在している物件の価値が相対的に守られやすくなります。
特に、立地、用途、運用体制、賃貸需要、宿泊需要をすでに持っている既存物件は、単なる「中古」ではなく、すぐに使える資産・すぐに収益化できる資産として評価されやすくなります。


2. 小樽の工事トラブルは、供給制約の強さを改めて示した

さらに直近では、小樽市内の北海道新幹線・札樽トンネル工事中に、掘削面から土砂が坑内に流入するトラブルも発生しました。鉄道・運輸機構の発表によると、2026年4月6日、小樽市春香町の地下約200mでトンネル坑内に土砂が流入し、けが人は発生していないものの、坑内監視や地上部への影響確認が続けられています。 

もちろん、この一件だけで「さらに大幅延期」と断定するのは早計です。

しかし投資家目線で重要なのは、今回のトラブルが、北海道新幹線の工事が想定以上に難しいという現実を改めて示したことです。

ここで見るべき本質は、
「新幹線が遅れるから不動産が弱い」
ではありません。

むしろ、
「工事が難しい」
「工期が読みにくい」
「建設人材や建設費の制約が大きい」
「大型開発も予定通りには増えにくい」
ということです。

これは、新規供給が簡単には増えない市場環境を意味します。
そのため、すでに立地や用途、運用可能性を持つ不動産の希少性は、むしろ高まりやすいと考えられます。


3. 札幌駅周辺の“停滞”は、逆に仕込みの時間を生む

札幌駅周辺は再開発期待が大きいエリアですが、実務上はすでに時間的なズレや負荷が出ています。駅前全体が一気に完成して刷新されるというより、不便さや工事中の状態を抱えながら、長い時間をかけて変化していく可能性が高まっています。

これは短期的には不便です。

しかし投資の視点では、別の見方もできます。
完成後に一斉に価格が上がる相場ではなく、時間を味方にして仕込める相場になる可能性があるからです。

再開発が遅れるほど、既存の便利な導線、地下アクセス、既存商業、既存賃貸、すでに人が流れている場所の価値は残りやすくなります。

つまり、完成予想図だけで買うのではなく、
「今すでに人が動いている場所」
「今すでに賃貸需要がある場所」
「今すでに商業・生活導線がある場所」
を選ぶ重要性が高まっているということです。


4. 倶知安駅前は、むしろ売りが加速している

延期ニュースが出ても、倶知安駅前の不動産マーケットが止まっているわけではありません。
むしろ、駅前周辺では売却相談、成約、価格上昇の動きが続いており、坪単価も上がっている印象があります。

ここから見えるのは、マーケットが「新幹線だけ」を買っているわけではない、ということです。

倶知安駅前の強みは、新幹線期待だけではありません。

すでに生活インフラがあり、役場・病院・学校・商業施設へのアクセスがあり、ニセコ観光圏の玄関口として機能しています。さらに、スタッフ住宅、長期賃貸、事業用需要、将来的な駅前再整備期待も重なっています。

だからこそ、開業時期が後ろ倒しになっても、倶知安駅前の価値が単純に下がるとは限りません。

むしろ、開業までの時間が延びたことで、駅前を先に押さえたい投資家や事業者の動きが強まる可能性もあります。

なぜなら、駅前の土地は後から簡単に増やせないからです。
2038年度末頃という見通しになったとしても、駅前の一等地がその時まで同じ価格で残っている保証はありません。


5. 「新幹線で伸びる場所」より「今すでに回る場所」が強い

開業時期が読みにくい局面では、将来期待だけで買う投資は危険です。

逆に強いのは、すでに需要が成立している物件です。

たとえば、賃貸需要がある物件、宿泊運用が可能な物件、セカンドハウス需要がある物件、スタッフ住宅として使える物件、自己利用と賃貸の両方が見込める物件などです。

さらに、運用許可、用途地域、管理体制、除雪体制、清掃体制、消防・宿泊対応など、ルール面・運用面で強みがある物件は、より評価されやすくなります。

延期ニュースは、
「未来の夢だけで買うな」
という市場からのメッセージでもあります。

これから重要になるのは、現金を生む力、資産性が落ちにくい条件、出口の多さです。


6. 新築だけではない。中古・既存物件の価値も上がる局面

建築費が上がり、工期が読みにくく、職人や施工会社の確保が難しくなると、投資家は必ずしも「土地を買って新築を建てる」だけを選びません。

むしろ、既存物件の価値が上がりやすくなります。

たとえば、すぐ貸せる戸建て、すぐ宿泊運用できる物件、スタッフ住宅として使える建物、リノベーションで価値を上げられる中古物件、インフラや建築確認の不確実性が少ない既存建物などです。

建築コストが高く、工期が読めない局面では、既存物件は単なる「古い建物」ではなく、時間を買える資産になります。

新築を建てるには、土地探し、設計、確認申請、施工会社の確保、建築費の見積もり、工期管理、完成後の運用準備が必要です。

一方、既存物件であれば、リフォームや家具・設備の入れ替えによって、比較的短い時間で賃貸・宿泊・自己利用に回せる可能性があります。

延期局面では、この「時間価値」が非常に大きくなります。
開業期待だけで土地を寝かせるより、今から収益を生む物件の方が、投資判断として強く見える場面が増えていくはずです。


7. ニセコ周辺は「鉄道一本足」ではない。世界の資本は動いている

もう一つ重要なのは、北海道、特にニセコ周辺の魅力が「新幹線だけ」で決まっていないことです。

象徴的なのがAman Nisekoです。Aman公式サイトでは、Aman Nisekoは北海道・ニセコのモイワ山麓に位置する新たなリゾートとして紹介されており、日本で4番目のAman物件になるとされています。 

つまり、世界的なラグジュアリーブランドは、北海道・ニセコエリアに対して中長期の投資ストーリーを持っているということです。

これは、新幹線の開業時期だけでは説明できません。

ニセコ周辺には、雪質、自然、ウェルネス、長期滞在、富裕層向けセカンドハウス、国際的なリゾート需要という、複数の価値があります。
新幹線が遅れても、こうした需要がすぐに消えるわけではありません。

むしろ、世界の資本が見ているのは、短期の交通インフラだけではなく、北海道という地域そのもののブランド価値です。


8. 一方で、近藤・ルスツなどは「新築して転売」の余地がまだある

ただし、すべてのエリアで既存物件だけが正解というわけではありません。

倶知安駅前やヒラフ中心部のように土地価格がすでに上がっている場所では、土地取得費と建築費の両方が重くなり、新築開発の利益幅が圧迫されやすくなります。

一方で、近藤やルスツ周辺のようなエリアでは、まだ土地取得価格と完成後価値の差を作れる余地があります。

近藤エリアは、倶知安駅前やヒラフ中心部と比べると価格が抑えられている一方で、ニセコ町内、羊蹄山ビュー、広い土地、自然環境、別荘需要といった魅力があります。つまり、土地を安く仕入れ、建物の企画・デザイン・用途設計によって価値を作る戦略が成立しやすいエリアです。

ルスツも同様です。
ニセコ中心部に比べると価格が抑えられている一方で、スキーリゾートとしての知名度、夏のアクティビティ、ファミリー需要、インバウンド需要を取り込めるポテンシャルがあります。

つまり、倶知安駅前では、既存物件・駅前導線・収益性が強い。
一方で、近藤やルスツでは、土地取得+新築開発+転売/運用の戦略がまだ狙える。

同じニセコ圏でも、勝ち方が違うということです。


9. 結論:延期ニュースで弱くなる市場ではなく、選別が進む市場

今回の新幹線延期や小樽での工事トラブルを見ると、短期的には「また延期か」「北海道新幹線は大丈夫か」という不安が出るのは当然です。

しかし、不動産投資の視点では、これは単純なネガティブニュースではありません。

むしろ、今回のニュースによって、以下のことがより明確になりました。

供給は簡単に増えない。
建築費は下がりにくい。
新築の完成時期は読みにくい。
駅前・既存物件・運用可能物件の希少性は高まりやすい。
一方で、近藤やルスツのような周辺エリアでは、新築開発によるバリューアップ余地も残っている。

これからの北海道・ニセコ圏の不動産投資で重要なのは、
「新幹線が来るから買う」
ではありません。

新幹線が遅れても価値が残る場所・物件・使い方を選ぶことです。

倶知安駅前では、既存の導線と収益性。
ヒラフ・ニセコ中心部では、希少性とブランド力。
近藤やルスツでは、土地取得価格と建物づくりによるアップサイド。

延期は、買わない理由ではありません。
むしろ、“どこでも上がる相場”から、“選び方が上手い人だけが勝つ相場”に変わったという合図です。

筆者

Holmes Alan Robert

Originally from Sheffield, England. Graduated from the University of Sussex.

After retiring as an Associate Professor at Sapporo Medical University, he started a new chapter in his career about 20 years ago as a pension owner in the Hirafu area. Since then, he has been involved in running cafés and ski rental shops in central Niseko, closely observing the area’s development as one of its early innovators.

He began his real estate career around 15 years ago, and since then, he has been actively involved in various large-scale development projects and commercial property transactions in Niseko.

Fluent in Japanese and supported by a team of Japanese staff, he has built strong relationships with key local figures in the Niseko, Kutchan, and Rusutsu areas. This extensive network allows him to identify and secure undervalued, off-market, and bargain-priced properties before they reach the open market.